昭和27年の夏。東京、東中野に秋には立ち退きを迫られているオンボロアパート、通称“東中野ハウス”があった。ここには戦争の傷あとを負った女たちが住んでいる。ある日、元芸者の初江が睡眠薬で自殺を計った。隣の部屋に住む米兵のオンリー、通称ミーは狂言だと撫然として言った。料理屋の仲居をしている信子が、別れた夫のもとから息子の謙一を連れてきた。未婚の母・雅代と暮らす7歳の友子から見れば、住人たちは普通の大人たちとは違っていた。だが、謙一の手を取りはらっぱを走り回ると、心のなかのモヤモヤも消えていくような気がする。アパートにはまた、***の弟と暮らす中学の教師、柴田がいた。彼は誠実な人柄で、友子と謙一をとても可愛がってくれる。友子は母の雅代が、柴田の前でよく笑い、華やいでみえることも見逃さなかった。母の心が、自分から柴田に向くのを不快に想う気持と、そんな母を綺麗...
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